ページ上へ

プロバイダ責任制限法とは

2000年代から急激に拡大したインターネットですが、掲示板や口コミは「誰が書き込んでいるのかが分からない」ため、誹謗中傷によるプライバシーや人格権の侵害や犯罪の温床となっておりました。
この状況を変えるべく制定された法律が「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称“プロバイダ責任制限法”)です。

そもそも「プロバイダ」とは?

パソコンとインターネットイメージ

プロバイダとは、“インターネットを接続するためのサービスを提供する会社”の事で、NURO・ソネット・OCN・BIGLOBE・nifty等が有名です。
また、これらの会社の事を厳密には“アクセスプロバイダ”と呼びますが、プロバイダ責任制限法の指す「プロバイダ」には、SNS・掲示板・ブログ等も含まれた総称であり、前述したサービスを提供する会社のみに限定されるものではありません。

※誹謗中傷対策に於いてはアクセスプロバイダよりも実際の管理者等に対する請求がほとんどとなります。
当ページではアクセスプロバイダ、サイト管理者等を総称し「プロバイダ」と呼ばせて頂きます。

プロバイダ責任制限法が与えた影響

2001年に設立されたプロバイダ責任制限法により、プロバイダの責任が初めて明記され、プロバイダ側のみならず利用者にも大きな影響を与えるようになりました。
大きな変化としては「①送信防止措置」及び「②発信者情報の開示」が可能になったという点が挙げられます。

①送信防止措置

インターネットはプロバイダを通して発信されておりますので、プロバイダの裁量で任意に該当箇所を表示させないようにする事が可能です。
プロバイダ責任制限法が制定された事で、人権侵害が認められる場合には“送信防止措置”を求める事が出来るようになりました。
これにより、インターネット上での書き込みは“削除される可能性”が生まれ、プライバシー権や人格権の侵害及び犯罪を未然に防ぐという効果を生んだのです。

②発信者情報の開示

無法地帯であったインターネットですが、“何を書いても良い”という時代はプロバイダ責任制限法の登場により終わりを告げました。
インターネット上での書き込みによって損害を被ってしまった場合、同法律に基づき発信者の情報開示を求められ、損害発生時には損害賠償請求や刑事告訴を行えるようになったためです。
“損害賠償”“刑事罰”を受ける可能性がある事で、ネット上の書き込みマナーは以前に比べて格段に向上したと考えます。

送信防止措置のやり方

プロバイダに求める措置としては「①送信防止措置」⇒「②発信者情報の開示」の順番で行うのが一般的です。
もちろん、いきなり②にて情報開示を求めるのも問題ありませんが、まずは裁判外の請求で様子を見るのがセオリーであり、①が不発だった場合の最終手段として考えておくべきでしょう。
まずは①の送信防止措置のやり方について解説したいと思います。

どこに防止措置を求めるべきか

まず“どこに対して送信防止措置を求めるべきか”を決定する必要があります。
選択肢としてはWEBサーバー、レンタル掲示板サービス、管理人(サイト所有者)、発信者のいずれかに請求する方法が考えられます。

掲示板への誹謗中傷の相関図

上記は「掲示板で誹謗中傷を受けてしまった」という例になりますが、選択肢としては

①発信者に直接書き込みを止めて欲しい旨を伝える
②掲示板管理者(A社)に送信防止を求める
③サーバー・レンタル掲示板管理者(B社)に送信防止を求める

の3つが考えられます。

まず、①は現在進行形で書き込みが行われている場合には有効ですが、過去の書き込みは消えませんし、いずれにせよA社又はB社へ発信者情報の開示を求めなければなりません。
そのため、①は選択肢からは除外され、②③のいずれかをケースに応じて選択する形になります。
大手の掲示板であれば比較的早く対応してくれるケースが多いため②を選択した方が良いですが、小規模な掲示板であれば②よりも③の方が早いケースがあります。

掲示板管理者に対する申請方法

まずは、前述した②掲示板管理者へ削除を求める方法からご説明したいと思います。

送信先を探す
5ちゃんねるトップページの削除ガイドライン

多くの掲示板には「削除依頼フォーム」「削除依頼のメールアドレス」が設置又は公開されておりますので、そちらを見つけて下さい。
※例えば、5ちゃんねるであればTOPページの「削除ガイドライン」がこれに当たります。

管理者へメールを送る

5ちゃんねるの場合、送信先が公開されておりますので、こちらに直接メールを送ります。
“削除要請の際には、件名(削除申し立て)、内容(URL、レス番号、削除理由、理由を根拠付ける資料があれば添付、本人確認資料)を添付するものとする。”とありますので、これに沿った形でメールを作成しましょう。

メールの例
件名 削除申し立て
内容 削除担当者様

○○と申します。
下記の書き込みについて削除依頼を申請させて頂きます。

■URL…http://*********************
■レス番号…100,200,300,400,500
■削除理由
私の実名を明記した上で誹謗中傷が行われております。「痴漢で逮捕された」と記載されておりますが、そのような事実は一切ございません。生活に支障が出ておりますので、どうかご対応の程よろしくお願い致します。

■添付資料
・書き込みが分かるスクリーンショット画像
・運転免許証の画像

プロバイダや掲示板によって方法や書式は異なりますが、基本的にはガイドラインに沿って申請すれば問題ありません。

サーバー管理者への依頼

基本的には掲示板管理者と同様に、削除の依頼を求める形で手続きを行います。
しかし、掲示板とは違い管理者が誰なのかはサイトを一見しただけでは分からない事がほとんどですので、管理権限を持つ人や会社が誰なのかをまずは特定する必要があります。

管理者情報を調べる

まず、サーバーの管理者がどこなのかを確認する必要があります。
基本的には、ドメイン名の登録情報を公開している「whois検索」というサービスを利用し、管理者を特定します。
※基本的にはどちらのサービスを利用しても問題ありませんが、サービスによって「jpドメインのみ」「bizドメインのみ」とったものがありますので気を付けて下さい。

1.検索ボックスに調べたいURLを入力
whois検索の検索ボックス
2.登録者名とサーバー名が公開
whois検索で表示される登録者名
3.特定出来ない場合、ドメイン取得代行業者へ照会
検索画面で表示されるドメイン取得代行業者

以下の手順

メールアドレスや連絡先が分かりましたら、後は前述した「5ちゃんねるの削除方法」と同様に削除の依頼を申請します。
各々で必要書類が異なりますが、原則として「削除申し立てを行いたい旨」「削除内容(URL、誹謗中傷の内容、削除理由等)」「証拠」があれば問題ありません。

以上、送信防止措置の手順と概要についてご説明させて頂きました。
総務省や東京都の公式HPにてプロバイダ責任制限法の概要やガイドラインが発表されておりますので、お時間のある時に一読してみてはいかがでしょうか。

【関連URL】

総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html

東京都総務局人権部「掲示板等への書き込みの削除を依頼するには」
http://www.soumu.metro.tokyo.jp/10jinken/tobira/sakujyoirai.html