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誹謗中傷で「責任」は問えるのか?

誹謗中傷で心が傷付いてしまった被害者

「誹謗中傷を受け、心も体も傷ついてしまった…」

そんなとき、被害者の多くが加害者に対し“許せない”と思うのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、誹謗中傷は、懲役や罰金等の刑罰が科される“刑事訴訟”又は損害が発生した場合に損賠を求める“民事訴訟”の対象となります。
まずは両者の違いについてご説明したいと思います。

刑罰とは

罪に対する刑罰を定めた刑法

刑罰とは、死刑・懲役・禁固・没収・罰金等、罪を犯した人の身体や財産に対して直接的な罰を与えるものです。
ニュースで“懲役〇年の刑”とよく耳にしますが、こちらは刑罰の筆頭と言えるでしょう。
なお、刑罰はその人の権利を大きく阻害する罰になりますので、罪状は予め「刑法」に規定されたものでなければならないとされています。(罪刑法定主義)
※分かりやすく言うと「こいつ腹立つから逮捕!」「怪しいから取り敢えず逮捕しておくか!」といった曖昧な理由ではダメということですね。

誹謗中傷の刑罰

誹謗中傷を行った場合、以下の罪に当たる可能性があります。

名誉棄損罪
(刑法230条)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者はその事実の有無にかかわらず3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。
侮辱罪
(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱したものは拘留または科料に処する。


両者の違い

大きな違いとして「事実を摘示しているか否か」「量刑」の2点が挙げられます。
前者は文字通り“誹謗中傷の内容が事実であるかどうか”を指しておりますが「事実=真実」という訳ではなく、嘘を公然に流布し特定の人の名誉を傷つけた場合でも成立します。

例)
①事実ではないのに「AはB子と不倫している。」と嘘を言いふらされた。
…嘘だが名誉棄損に当たる可能性がある

②「お前はバカだ」と言われた。
…「事実」を言っていないので名誉棄損には当たらない。

一方で、侮辱罪は「事実の摘示がない場合」に成立する刑罰になります。
そのため、例えば不特定多数の人がいるところ(公然)で、「バカ」「アホ」等の言葉で相手を罵った場合には、名誉棄損では無く侮辱罪が適用されることになります。

量刑の違い

また、量刑にも大きな差異が見られます。
名誉棄損は最高刑が懲役3年となっているのに対し、侮辱罪は拘留または科料に留まっています。(過料とは1万円以下の金銭を支払う刑罰です。)
侮辱罪はその場で辱めを受けるにとどまりますが、名誉棄損罪は社会的に大きな影響を及ぼす可能性が高いこと、特定の人の信用を乏しめようという悪意があること等が、量刑が重くなっている理由です。

民事上の責任

裁判所では損害賠償請求ができる

民法には、何かしらの事由によって損害を負ってしまった場合、損害賠償責任を問える旨を明記しています。
そのため、要件に当てはまらなかった・不起訴となってしまった等で刑事罰が問えない場合には民事上で責任を問うケースが多くなっています。
もちろん、刑事罰と併せて民事上の責任を問うことも可能です。

不法行為に基づく損害賠償請求

ドラマやニュース等で良く“慰謝料”という言葉を耳にするかと思いますが、こちらは所謂民法に記載された「不法行為」によって損害を受けた場合に請求したお金のことを言います。
具体的には身体(精神的なものを含む)や財産に損害を受けた場合にそれに対する賠償請求を行うことを指し、誹謗中傷も要件に当てはまれば請求することが可能なのです。
なお、損害賠償請求を行うには、

①故意または過失であること(損害を受けると分かっていた)
②権利や利益を実際に侵害した(心身に対して損害を加えた事実がある)
③損害の発生(②によって損害が発生している)
④因果関係(③は②が原因で起こったということ)

の要件を満たす必要があります。

誹謗中傷の被害に遭われて悔しい思いをしたという方は、ネット対策だけでなく法的な措置も検討してみてはいかがでしょうか。